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10月例会 講演会
「第2次世界大戦終結から70年/その歴史的意味と今日に及ぶドイツへの影響」を聴講して
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会員  秋山 友一


秋山氏とBahrke氏

10月25日に開催されました例会で第2次世界大戦終結から70年をテーマに関西外国語大学等で ドイツ語の講師をされているLudwig Bahrke氏に講演をして頂きました。
氏は横須賀市にあります「ABCドイツ語サークル」の講師も務められていまして、 私もそこで8年前よりドイツ語を学ばせて頂いております。 いわば師弟の間柄でありますがサークル以外では親友として交際させて頂いておりまして、 拙宅にお越し頂いたときはドイツ語と日本語で様々な話題について 夜が更けるのも厭わずいつまでも続く会話を堪能しております。 氏の歴史、国際情勢や言語に対する知識は深く、常に慧眼に感服致しております。



講演の内容としましては大戦前夜から戦争終結に至るまでの流れについて、 ヨーロッパの各地に配置されたドイツ軍部隊の降伏の状況や現在の ドイツ連邦共和国に及ぼす影響など多岐にわたり大変分かりやすく解説して頂きました。 特に興味をひかれたのが、第一次大戦終結時の状況と第二次大戦のそれとでは全く様相を異にするものであったことです。 1945年5月のドイツは灰燼に帰し首都ベルリンまでも瓦礫の山となっていた状況でした。 それに比べ第一次大戦終結時のドイツの銃後の状況はそれほど酷いものではなく 一部の地域を除きドイツ本土が蹂躙されることはなかったということでした。 ここに近代戦、総力戦の恐ろしさを垣間見た気がしました。 第二次世界大戦は大きく分けて太平洋地域と欧州戦域に分かれていますが、 太平洋戦争のみを考えるとこの戦争の一部しか知ることができません。 欧州戦争、そしてその原因となった事柄をたどっていかなければ完全に理解することは不可能です。 歴史とは偏らず、複眼的そして公平な目で学ぶことが重要なのではないでしょうか。 今回の講演を聴かせて頂きその思いを強くすることができました。
氏の平和に対する想いは深くこの講演もそれに満ちたものであったと思います。 最後に講演の始めに紹介していただいたドイツ連邦共和国基本法の第一条の一部を引用させて頂きます。

Die Würde des Menschen ist unantastbar. Sie zu achten und zu schützen ist Verpflichtung aller staatlichen Gewalt.
(人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、および保護することは、すべての国家権力の義務である。)
Das Deutsche Volk bekennt sich darum zu unverletzlichen und unveräußerlichen Menschenrechten als Grundlage jeder menschlichen Gemeinschaft, des Friedens und der Gerechtigkeit in der Welt.
(ドイツ国民は、それゆえに、侵すことのできない、かつ譲り渡すことのできない人権を、 世界のあらゆる人間社会、平和および正義の基礎として認める。)




2015年望年会開催

12月13日(日)午後2時より第1部湘南アカデミアで 「三角ヴァイオリンの演奏とドイツ菓子とお茶をたのしむ会」、 その後第2部は近くのダイニング・バーDivoでの 「美味しい料理とお酒で語りましょう!」が開かれました。

      

鎌倉・藤沢の国際交流フェストでも人気のアルペン音楽を演奏する 鬼久保洋治氏が新たに取り組んでいる三角ヴァイオリンについての 話と演奏を披露。 ヴァイオリンの原型とも言われチロルの古楽器、現在は演奏されることは多くないようです。 曲目は「チロルの子守唄」「雪のワルツ」「野バラ」「浜辺の歌」等。 お茶はアフリカ出張の多い、昔農理事から珍しいお茶が提供され、 お菓子はドイツの製菓マイスターの資格を持つ会員曽根愛氏の「aus Liebe」 の「マルガレーテン(マジパンペースのしっとりとした焼き菓子)」 「シュトーレン(ドイツの代表的なクリスマス菓子)」をいただき午後の ひと時を楽しみました。

その後、場所を変えて夜の雰囲気、 ダイニング・バーを借り切っての「食べ・飲み・歌い・語る」時間を過ごしました。 新しく会員になられた方々の自己紹介があり、今後の活動を語り、クリスマスの歌を 合唱し、今年の活動の締めくくりとなりました。





11月例会
日本とは何だろうか ― 日本民族学の20世紀
 ヨーゼフ・クライナー教授講演会

会員  寺澤 行忠


寺澤氏とKreiner氏


 2015年11月29日に湘南アカデミアにて、 標記のテーマでドイツにおける日本学の泰斗、ボン大学名誉教授ヨーゼフ・クライナー博士の日本語による講演会が行われた。

 民族学は、民族文化の特質を歴史的に、または他文化との比較によって研究する学問で、近年は一般に文化人類学と呼ばれている。

 その民族学が日本を研究対象とする時、日本民族や日本文化はどこから来たのか、どのように形成されたのか、 どのような構造を持っているのか、といった日本人あるいは日本民族のアイデンティティーが中心的なテーマに据えられることになる。

 日本における民族学研究は20世紀に入って本格的な進展をみた。 講演では日本で最初に人類学の現地調査を海外で行った鳥居龍蔵、 ウィーン大学に学び、日本民族学の草分け的存在であった岡正雄、自国の伝承文化に研究の力点を置く、 日本民俗学の開拓者柳田国男、日本民族学会を設立した渋沢敬三、「騎馬民族国家」の江上波夫、 「文明の生態史観」の梅棹忠夫、「照葉樹林文化」「日本文化の多様性」の佐々木高明などをはじめ、 日本民族学を牽引した人々の学問的業績について、日本民族学の展開に沿って懇切なご説明をいただいた。 沖縄、奄美、南九州、アイヌなどの実地調査から日本各地へ研究のフィールドを広げていった、 ドイツ、ヨーロッパにおける日本研究の第一人者による明晰なご講演で、 われわれ一般人にもよく理解できるものであった。自民族や自国文化の本質は、 外からの方がかえってよく見えるということもあるのである。

 ヨーゼフ・クライナー教授は、1940年にオーストリアのウィーンに生まれ、 ウィーン大学で民族学、日本文化を専攻、東京大学東洋文化研究所へ留学され、 ウィーン大学で博士号と教授資格を取得された。1971年にウイーン大学教授、 同日本文化研究所長、1977年にボン大学教授、同日本文化研究所長に就任、 1988年より東京のドイツ−日本研究所の初代所長を8年間務められた。 その後法政大学に特任教授として招かれ、現在も同大学を拠点に旺盛な研究活動を続けておられる。 2015年には海外の若手日本研究者を対象とするヨーゼフ・クライナー博士記念日本学賞が 法政大学に設けられ*、この程その第一回の記念賞がイタリア・フォスカリ大学の沖縄研究者、 ティネッロ・マルコ氏に贈られた。

 1974年から79年までヨーロッパ日本研究協会(EAJS)の会長を務め、 1990年にはヨーロッパ学士院会員となった。1996年にドイツ連邦共和国功労勲章一等功労十字章、 1997年にオーストリア共和国科学芸術功労一字章一等等級を受賞された。 日本でも1995年に大阪府山片蟠桃賞、2004年に国際交流基金賞を受賞、 また2006年には日本政府によって旭日中綬章を授与されるなど、各方面より顕彰されている。

 著作も多数に上り、欧文の業績も多いが、日本語による刊行物だけでも、 『日本民族学の現在:1980年代から90年代へ』(編著、1996年、新曜社)、 『ケンペルのみた日本』(編著、1996年、日本放送出版協会、「NHKブックス」762)、 『地域性からみた日本:多元的理解のために』(編著、1996年、新曜社)、 『黄昏のトクガワ・ジャパン:シーボルト父子の見た日本』(編著、1998年、日本放送出版協会、 「NHKブックス」842)、『江戸・東京の中のドイツ』(安藤勉訳、2003年、講談社、 「講談社学術文庫」1629)、『近代<日本意識>の成立:民俗学・民族学の貢献』(編著、2012年、東京堂出版)、 『日本民族学の戦前と戦後:岡正雄と日本民族学の草分け』(編著、2013年、東京堂出版)、 『日本とはなにか:日本民族学の二〇世紀』(編著、2014年、東京堂出版)など枚挙にいとまがない。 英文の“Japanese Collections in European Museums”(「ヨーロッパの博物館・美術館所蔵の日本関係コレクション」2巻、 編著、2005年、ボン)も、ヨーロッパの主要博物館、美術館が所蔵する日本の美術品、 工芸品などを丹念に調査されたもので、画期的な業績である。

 わが湘南日独協会の松野義明会長は、若き日、ウィーンに留学された折に、 ヨーゼフ・クライナー氏ご一家と縁を結ばれ、学問を語り合いながらよくウィーンの森を散策されたという。 そしてクライナー氏が東京に留学した際には、松野家に下宿して勉学に励まれたということである。 今回の講演会も、そのような両氏の不思議な縁の巡りあわせによって実現したものである。(了)

*ヨーゼフ・クライナー博士記念日本学賞新聞報道


      




ふじさわ国際交流フェスティバル2015年参加

11月8日(日)藤沢駅北口サンパール広場で開催され、湘南日独協会はブースを設置、活動の紹介とドイツビールとプレッツェルの販売をしました。 お手伝いの皆さんのおかげで完売、写真のように留学生の訪問もあり、ダンケシェーンの演奏もありました。







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