11月例会 講演会
「子供のQOLと主張性」
−日本とドイツの比較から−
講師 柴田玲子氏
聖心女子大学文学部心理学科准教授
会員 大澤 由美子
先生のにこやかな笑顔で講演がはじまる。
ドイツで子どものQOLを調査するために初めてドイツ語を学んだこと現地での
知り合いの協力を得たこと等々、研究に対する積極的な取り組みがうかがえた。
その中でも、当協会副会長伊藤志津子さんとご主人の伊藤一さんの的確な支援も
あったようで会員としてはちょっとうれしい気持になった。
QOL(クオリティーオブライフ)は、人間らしくその人らしく人生に幸福を見出して
生活しているかの尺度をいうらしいが、介護や医療では用いられているのを耳にする
ことがある。先生の研究は 小学生のQOLを国際比較しそこに出てくる差の要因を
探り今後の教育に生かそうとするものであった。今回はドイツと日本を比較する話であった。
柴田 玲子氏
子どものQOL尺度は身体的健康、精神的健康、自尊感情、家族との関係、
友だちとの関係、学校生活から構成されている。
調査対象は、3・4年生(10歳)にしている。
この年齢設定は10歳以上になると日本ではそのまま5年6年と進むが、ドイツでは
進路が違ってくるという事情からだそうだ。
今回は、特に自己肯定感(自尊感情)、主張性(自己表明と他者配慮)、について
取り上げられた。日本の子どもはドイツに比べ自己肯定感がとても低く、
主張性も低いことが分かった。
この差の要因の一つに文化的背景があると考え両国の学校教育に目を向けた。
ドイツの学校では自分の意見を主張することが求められ、日本の学校では
みんな仲良く助け合うことが求められている。
言い換えると自己主張を求める文化と他者配慮を求める文化の違いが両国の子どもの
QOLに反映されているということであった。
自己表明の得点はドイツの方が高い。これは男女別にみてもドイツの方が高い。
他者配慮の得点は僅かにドイツが高い。
ドイツも日本も男女別でみると女性の方が高い。他者配慮については、
「年齢が違っても国が違っても女性の方が高い」というコメントがあり、
やっぱりと大きくうなずいてしまった。
自己表明が低く僅かではあるが他者配慮も低いとなると文化の違いとは言え「日本の教育は・・・・」ということになる。
自己表明の低い日本の子どもが、大した自己表明もせず、何となく高校へ何となく
大学へ何とか就職しても何にもできない社会人になる例が増えてきている。
(自己表明だけが原因ではないだろうが)
また、一方では自己中心的理不尽な要求をするモンスターペアレンツやクレーマーが
最近急増している。
自己表明力をつけることは大切だとは思うが、常に他者配慮力もつけなければと講演
を聞きながら思った。