9月例会 講演
「ドイツ音楽の成り立ち(バッハ)まで」
会員 田中 幹夫
田中 幹夫氏
講師高橋善彦氏(当協会理事)は中学時代に出会ったトランペットを高校、大学、社会人を通じ演奏、
その他にも幅広く音楽活動をアマチュアとして続けておられます。
本日は氏が取り組んでいる欧州音楽史に関する海外文献資料の収集研究と日本語資料への集大成作業の中から、
ドイツ音楽がどのように成り立ってきたかについて、氏が敬愛するバッハの時代までをお話しされました。
内容はケルト聖歌とグレゴリオ聖歌の比較に始まり、音楽学派の発生と作曲家達の交流、
ドイツ音楽への伝播過程としての「北回り」と「南回り」についてなどを席上配布のカラー図版満載45頁からなる資料と
パソコン音源の試聴を随所に入れながら進められました。
情報量の大変多いお話でしたが、ここにそのごく一部を紹介させていただきます。
1)ケルト聖歌とグレゴリオ聖歌
ケルト聖歌は譜面が無い口伝継承のため現存資料は無いが音楽はスコットランドなどに残っている。
グレゴリオ聖歌で画期的な事は11世紀に譜面が現れて音楽が他の土地に移動可能になり、相互に影響しあう機会が生れた事。
2)音楽学派、作曲家の交流とその背景
音楽家達は時の権力と金のあるところに集まり各々の音楽様式を持つ楽派を形成した。
15世紀後半から16世紀にかけて毛織物業を中心に栄えたフランドル地方に生まれたのがフランドル楽派である。
そのフランドル生まれの作曲家Willaertはイタリアでベネチア楽派を創設し弟子を多く育てた。
ベネチアには当時文化の中心だったローマから戦禍を逃れて多くの芸術家が集まった事や、
印刷技術の発達によって音楽出版の中心地になった事などが、この楽派の繁栄の背景にあった。
この楽派の二大作曲家の一人Gabrieliはサンマルコ寺院内の残響効果を音楽に生かす手法を生み出し、
もう一人のMonteverdiはオーケストレーションの基本を作った。
3)ドイツ音楽への北と南からの伝播経路
「南回り」でドイツ音楽に影響をもたらしたのが、ドイツ生まれのSchützである。
彼は14歳で才能を見出されベネチアのGabrieliに、更にMonteverdiのもとで学び、
ドイツに戻りドイツ音楽を牽引するドレスデン宮廷楽団楽長に着任、生涯楽長を務めドイツ音楽発展に貢献した。
次に「北回り」で影響を与えたのが北ドイツオルガン楽派のScheidt、Praetorius他で、
彼らはアムステルダムで活動する最後のフランドル楽派のSweelinckに師事して北ドイツの音楽を発展させた。
こうして南ドイツの音楽はイタリアの影響を大きく受け、一方北ドイツの音楽は影響を受けながらも独自の技法を多く生み出した
最後に、バッハに影響を与えた作曲家達
16歳の若きバッハはハンザ同盟の富で栄えたリューベックの聖マリエン教会オルガニストBuxtehudeを
400km離れたチューリンゲンから訪ねている。
Buxtehudeの19曲のオルガン前奏曲はバッハに強い影響を与え、
バッハのトッカータやフーガに同じ手法を見ることが出来る。
そしてカノンでよく知られるPachelbel、3,600曲も作曲したTelemann・・
話は尽きませんが紙面が尽きそうですのでこの辺で終りにしたいと思います。
以上
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高橋 善彦氏
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