4月講演会「福島第一原子力発電所事故を正しく理解するために」に出席して

会員 勝亦正安



講演される松野義明氏



 3月11日の未曾有の大災害から1ケ月以上を経過、地震と津波の災害からの復旧活動は徐々に本格化、さらには復興計画も取り沙汰される一方、福島第一原発の事故については、原子炉の冷却化と放射性物質の漏れ対策が思うような成果を挙げるに至らず、国際的な事故評価尺度で当初言われたレベル3乃至4は訂正され、最悪のレベル7が今月12日原子力安全委員会から発表されるに至った。これは、丁度25年前の4月に旧ソ連で起こったチェルノブイリ原発爆発事故並み、人によってはそれ以上に深刻な事態と言われる。
 加えて、放射能に晒らされた東北産農水産物への出荷規制措置、さらには4月22日から実施の半径20Km以内立ち入り禁止措置等々と相俟って、地域周辺住民のみならず国民全体の不安はかえって高まっている。
 こうした中、本講演会は、当初予定されていた映画会に代えて4月23日実施された。当日は、悪天候にも拘わらず多くの聴衆が出席した。講師は、原子力の専門家であり、当協会副会長松野義明氏。同氏は、長く日本原子力研究開発機構(JAEA)にあって高速実験原子炉の建設と研究開発に従事され、また、最近までロシア原子力潜水艦の解体プロジェクトの技術顧問を勤められた。
 原子の構造から始まって、放射性物質の定義、半減期の特性、マスコミに頻繁に登場する放射能の強さ、影響を表す単位のベクレル、シーベルトの説明、具体的な人体への影響の目安量、長期に亘り熱を出す厄介な使用済み燃料、原子炉の仕組み、「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」の安全設計の基本的考え方、そして、福島原発事故の具体的内容とその意味等々、広範囲に亘る事項一つ一つを、講師はスライドを使って多数の図表上に素人にも分かり易く説明された。纏めとして8項目に亘る今後の課題点を、原発専門家としての自省の意を込めて言及されたのが印象的であった。予定時間はたちまちの内に過ぎ、最後に「湘南の人々は安心して日を過ごして貰って結構、しかし、事態は深刻です」と締め括られた。
 国外でも大々的に報道された福島原発事故について、今後、事故原因の究明、安全対策と危機管理の妥当性、さらに、より基本的にエネルギー政策に絡めた原発推進策の可否が徹底的に検討されることになろう。その結果は国際的にも注目され、論議されるであろう。
 これらは市井の凡人が考えるには余りにも大きなテーマであるが、政策、ひいては政治家を選択する権利を有する選挙民の一人として、筆者自身も考えて行かねばならない。
 この意味で、今回の講演会は極めて有益、教えられるところ大であった。機会あらば、本講演続編の実施を期待したい。


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