6月の映画会『嘆きの天使』

会員 森長京子



森長さん


 このFilmは1931年(昭和6年)の製作によるもので80年も前に作られた映画である。80年の風雪に耐えたFilmにも拘わらず管理保存が可成り良かったと推察される。見苦しいところは一つも見当たらなかった。
 (この映画は約30年後、アメリカでも製作された。主演スターはKurt Jurgensです)
 高校教師のRath教授(Emil Jannings)は受け持ちの生徒が淫猥な写真を持っている事を知って、謹厳実直な彼は責任上生徒の行動を確かめるべく、Cabaretなる処へ出かけて行った(ミイラ取りがミイラになる事とは知らずに)。教授にとってCabaretは初めての場所であった。
 そこで、世にも美しい女性(Marlene Dietlich)の歓待を受けお酒を振舞われ、今までに無い魅惑を感じさせられ、そして満足感に満たされた。毎日の様にCabaretに通う様になり、高校はリストラ。行き場の無くなった初老の男は女性からも胡散臭い厄介者に過ぎなかったであろう。女性からも仕事仲間からも疎まれた。失意の内に彼は、深夜人生の大半を培った高校の教室に来た。そして、酔っ払った彼は教卓にしがみついた。死亡したのか、酔っ払って寝込んだだけなのか?それは視聴者の判断によるものである。
 「美しき誤解」という言葉にある様に、Rath教授の誤解は余りにも犠牲が大きかった。「美しき女性に魅せられる」、こんな経験は若い時に存分に経験して卒業していれば良かったのに。
 このFilmはEmil JanningsであってもKurt Jurgensであっても非常に印象の深いFilmであった。


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