「ドイツ民謡と歌謡と詩の
言葉についての話」に出席して
湘南日独協会に相談して
本当に良かった!


会員 中沢夏樹



左から、宮下啓三氏と中沢夏樹氏


 10月16日、宮下啓三先生による特別例会講演が行われました。この会が開催に至った経緯は以下のようなものです。7月の湘南日独協会のイベントに非会員として初めて参加した私は、受付におられた大沢さんに「協会にゲーテなどに詳しい方いらっしゃいますか?」とお尋ねしてみました。それは私の祖父であるドイツ文学者小牧健夫によるゲーテの詩訳が、某言語学者から不当な誹謗をうけるという悩みを抱えていたためです。
 大沢さん、伊藤さんの仲介によりこの話が宮下先生の耳に入り、「協会の名誉にかけて納得のいく結論を出してさしあげたい」(当日のテキストより)と先生が情熱を傾けて頂いた結果実現したものです。体調万全で無い中、詳細な資料を作りまた力強く講演を頂いた宮下先生、更に予定外のイベント開催に種々ご尽力頂いた協会役員の方々には、改めて厚くお礼申し上げます。
 「ドイツ民謡と歌曲と詩の言葉についての話」と題した当日の講演は、前半にドイツ民謡や歌曲における原語と訳詞の違いなどがテーマとなりました。「霞か雲か」「ぶんぶんぶん」「こぎつね」など、取り上げるごとに出席者の中におられたアムゼル合唱団の方が朗々と歌い上げて頂き、例会ビギナーの私は会員諸氏のレベルの高さに驚くばかりでした。
 後半では祖父の訳したゲーテの『西東詩集』を取り上げ、詩の中の Schmetterling という語句が蝶なのか、蛾なのかというお話がありました。(ちなみにこれを蝶と訳した祖父に対し、某言語学者は蛾でなければ意味が通じないから誤訳、なおかつ蛾という意味を知らない訳者の無知を〜小牧編纂の岩波独和辞典では蝶、蛾双方とも掲げているにも拘らず〜各方面で公言しています)「誤訳の烙印はそう簡単に捺せるものではない」「ゲーテの形態論から蛾では意味が通じない」「大部な詩集の中で指摘が唯一つであったことは、他の正しさを逆に証明してくれたようなものだ」等々、先生のお話は有難く胸に響き、協会にご相談して本当に良かったとの思いを新たにしました。
 宮下先生とは先生の恩師である相良守峯氏が私の遠戚にあたること、また私の出身の慶応志木高校の校長をされていたことなど、浅からぬご縁を感じます。小さなきっかけから生まれたこれらの繋がりやご縁は、これからも是非大切にして行きたいものです。不肖の孫にてドイツ語は全く不得手ですが、これを機に協会に入会させて頂きました。協会員として宮下先生のご指導を少しでも長く賜れますよう心より願っております。





講演会会場


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