11月例会「ブラームスの生涯」

会員 昔農英男


 2011年11月27日の例会は林邦之氏の「ブラームスの生涯」と題する講演であった。既にご承知の方も多いと思うが講師は当協会の会員であると同時に、日本ブラームス協会の会員でもある。会場では音楽映像や録音資料を用いて人間ブラームスとその作品を紹介されたが、ブラームスの生涯に関する詳細な情報をとりまとめた冊子が用意された。内容は、大作曲家ブラームスの出自や音楽史での位置づけ、ハンブルクでの誕生からウィーンに没するまでの間に体験した出来事とその時期の作品をすべて年齢順に整理した詳細な年表、生涯にわたり訪れた都市や夏季に作曲で滞在した場所、年齢を追って整理した交友関係などである。これに加えて、この日のために借用された日本ブラームス協会所蔵の貴重な資料や、林氏が訪れたブラームスゆかりの地の地図やパンフレットなど、およそ入手可能な資料はすべてご用意いただいたと言っても過言ではないと思われる位であった。
 DVD映像による交響曲第3番とハンガリー舞曲でブラームスの世界への旅が始まった。シューマンとの出会い、結局は婚約解消に至ってしまうがアガーテとの交際、クララ・シューマンとの生涯を通じての交友関係など、地味でセピア色のイメージが強いブラームスであったが改めて人間臭さを感じさせてもらった。特に印象的だったのは、アガーテとの婚約解消の後、数年が経過してから作曲した室内楽曲でAGADHE(Agathe)のモチーフを作品に用い、昔の恋人の名前を作品で呼ぶなど心憎い人間ブラームスにますます惹きつけられた。
 ブラームスの主だった作品を作曲の背景とともに急いでたどる2時間余りであった。講演を通して知ったブラームスの素顔の一面が、入手した詳細な年表とともに、これから作品に触れるときに今まで以上に楽しませてくれそうである。生涯の宝物をいただいた林様に心から感謝申し上げます。


Copyright(C) 2008- 湘南日独協会 All Rights Reserved.

 

.