2月懇話会
「ドイツに学んだこと」に参加して


会員 上原勲



上原氏(左)と大久保氏(右)


 今回の大久保氏のお話は小生にとってとても楽しみでした。少しでもドイツ人のメンタリティを垣間見てみたいと思っていましたから。さて、兄はそれぞれ4〜5年の長さで3度に渡り渡独、銀行の業務に携わってこられました。仕事上ドイツ人と協働、指導にと、かなりしっかりとドイツ人の社会を見てこられたと思います。
 兄は2012年5月にTVK(テレビ神奈川)40周年特別番組の取材旅行に同行しました。今回のテーマはその折に取材した、ドイツの環境と再生可能エネルギーの問題に焦点を当ててのお話でした。ドイツは国家としてすでに脱原発を決定しています。しかしどうやって将来の電力エネルギーを賄っていこうとしているのかは大きな関心事です。
 最初の取材先はシュヴァルツヴァルトにあるフライブルク大学の森林・環境学部育林学科でした。森林管理官を育てています。森林管理官は森に関わることは何でもするとのこと。例えば、或る物を作るのに適した木材を見つけたりするとのことで、人気の職業です。
 ドイツは森の美しい国で、公有でも私有でも、誰でも自由に森を歩き、親しんでいます。森は水、命と繋がっています。フランクフルト市では市民が「森に行く日」がある位です。
 次いで、バーデン・ヴュルテンベルク州のカールス・ルーエの研究所を訪ねました。再生エネルギー転換のバイオマスの研究所です。研究者は元々原子力の研究者でしたが、脱原発が決まってから直ちに再生エネルギーの研究に取り掛かったそうで柔軟な対応です。
 エネルギーの丘と呼ばれるゴミの山がありました。国内には大戦中に破壊された都市の残骸の山があるそうです。ごみ山から発生するガスを熱エネルギーとしたり、風力や太陽光発電を積極的に進めています。バイオマスの材料を東南アジアや南米から輸入することも考えているようですが、研究者は、ドイツはドイツのやり方があり、日本は日本のやり方を考えたらよいと話していました。
 面白いのは「レンタル羊」でした。ゴミ山は雑草が生えます。リースした羊にこの雑草を食べてもらうのです。似た話は日本でも聞くなと思いました。これらの事業は公と民とが知恵と資金を出し合って取り組んでいます。
 電力は中央の電力会社からの送電ではなく、地元の小規模発電で賄う、地産地消に変わってきており、小回りの利く供給体制の確立を考えているそうです。更に、小さな小屋付きの小規模農園を借りて野菜や果物の自給自足をすることに関心が高まっています。自分達のことは自分達でしようという自立の考え方が見てとれます。
 兄が一番印象に残っている言葉は、“auf eigene Gefahr”(自己責任)だそうです。この言葉は随所に見られるようです。日本では、まず安全のためとして閉鎖か、設備を作ったりしますが、ドイツではオープンのようです。商業の世界でも、同業の店が近くで競合せず、お互いの住み分けを大切にしているとか、自分の仕事が何であれ、各々が誇りを持ち、他人の仕事も尊重する、というお話から自立は自律でもあると強く感じました。
 大久保兄のお話を聞いて、小生は、新しい状況に対してドイツ人が力を合わせて挑戦する勤勉さと逞しさ、そして奥の深さを感じさせられました。




懇親会会場


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