1月例会 映画「エリーザベト 愛と哀しみの皇妃(前編)」を観賞して

会員 野一色朝一



野一色氏


 久し振りに美しいドイツ映画を観賞させて頂きました。大きく3つのジャンルで考えてみました。

 一つは政治的、歴史的背景、二つは男女の情愛、三つは嫁姑の確執、家柄への誇り、執着が織りなす叙事詩が美しく展開されます。一つは遠く古代ローマ帝国時代のバイキング(入り江の民)ゲルマン人の時代から始まりローマ教皇権が世俗の上にあった1071年のハインリッヒ四世の「カノッサの屈辱」時代が下がって神聖ローマ帝国、王権神授説等に裏打ちされた絶対王政を経てナポレオン時代、普墺戦争、普仏戦争などヨーロッパは諸侯の戦いの場(領土、住民の獲得)であると同時に各王家、諸侯は婚姻で複雑に結びついており、現代ヨーロッパは庶民出身の王侯の結婚が増えたとはいえこの結びつきの流れにあります。オーストリア・ハンガリー帝国のハンガリ−の反乱、1848年の革命に続く第一次世界大戦の終結、帝国の解体へと至ります。

 第二は偶然とはいえ、妹(シシー)を本来の見合いの相手たる姉(ネネ)を差し置いて皇太子が一目惚れをし結婚となるシンデレラ的物語であるが、彼女の不幸はこの時から運命付けられ、波瀾の生涯の幕開けが始まる。彼女は女性としての強い情愛がその魅力であるが結婚の相手としては現代的にも不適であったのではないかと年寄り的に思う次第です。
 日本も四組に一組は離婚する現代、ベルギーのように二組に一組は離婚する男女の問題はキリスト教社会のヨーロッパでも日本でも同じ流れである事実を見ると文明社会に於ける人間の営みに思いを至すところです。

 第三の嫁姑問題は実に長い歴史があり「家」という伝統格式と嫁に来る女性の立場、特に王家であれば皇母の対応はごく当然であり、エリーザベト(皇妃)は柔軟に対応出来なかったところにこの不幸があったと思われる。しかし現代の女性は「別居」という方法があり夫(男)と子供を自分の物として「囲い込む」という手法により嫁姑問題を解決したと思われるが離婚が増え続けるのは「情愛結婚」の故と「男性の本能本質」を女性が理解出来ない所にあるのではないかと思考するしだいです。女性から見れば逆に男性が女性の本質を理解しない故と反論強調されるでしょう。

 さて、本編主題のオーストリアはさておき、軍事力でなくEUの盟主としての立場を確立したドイツを研究する事は現在約8115万人の人口を有する同国に日本の30年後の人口が近づく事は予測されており極めて重要な事と思われる。最近「日経ビジネス」で「強さの秘密ドイツ」の特集号を見て更めてドイツの強さ素晴らしさを再認識した次第です。悲劇の映画の続編を期待しつつ…(了)


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