湘南日独協会会報 Der Wind

 VOL.22 NO.5 通巻 130
 発行 2020.12.13
 更新 2020.12.15

   

 連絡先

 TEL: 0466-26-3028
 FAX: 0466-27-5091
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 jdgshonan.official@gmail.com
   

 ご案内

 湘南アカデミアの地図
 〒251-0025
 藤沢市鵠沼石上1-1-1
  江ノ電第2ビル7F
   
湘南日独協会顧問 吉田克彦さん を偲ぶ

湘南日独協会会長 松野 義明

9月23日、湘南の地をこよなく愛し、この地のため、 この地に住む人々のために多大の貢献をなされた江ノ電沿線新聞社の会長であり、 湘南日独協会の顧問でもある吉田克彦さんがロマンに満ちた生涯を閉じられた。 心からご冥福をお祈りする。

今から20年以上前のこと、定年退職直後の私が何かの用事で当時の江ノ電沿線新聞社社長の吉田さんを 事務所にお訪ねしたことがある。初対面のお話しの折、間もなくこの地域に湘南日独協会ができるので、 協力してほしいとのお話を頂いた。私の留学先も、 初めての就職先もドイツ語圏(オーストリアのヴィーン)であったし、 私の生涯の仕事の高速増殖炉開発研究の分野でも、ドイツは共同研究の相手国で、 私にとっては大変馴染み深い国であったので、二つ返事で仲間に入れて頂いた。

数日後、吉田さんから電話があった。 「松野さん、ドイツ語できますか?」との御下問である。 「私は新制高校で3年間、大学の最初の2年間にドイツ語を取っていたし、 その後ドイツ語圏に5年ほど住んでいたので、普通の生活をする程度ならできます。」 とお答えしたら、じゃあ、新しく発足する湘南日独協会の中にドイツ語講座を作りたいので、 松野さん、ドイツ語の講師になってくださいとのお言葉。 すでに受講希望者が何人かおられるので、カトリック教会の中に部屋を 毎週土曜日に予約してあります。 早速開講してくださいとのこと。 私はヴィーンで学生生活に一区切りをつけ、初めて原子力研究所に就職したころ、 ヴィーン大学で週1回夕方の2時間だけアルバイトで日本語を教えた経験はあったが、 ドイツ語を教えた経験は皆無だった。したがって、大いに慌てたが、とにかく、 初等文法から始めた。最初は10人前後の受講者の方がおられたが、その後数年のうちに、 語学専門の先生方の多大なご協力もあり、どんどん充実してきて、今日に至っている次第である。

しかし、今考えてみると、吉田さんが本当に望んでおられたのは、 単なる語学の勉強ではなく、 その先に期待される受講者の方々の知的好奇心の拡大と深化であったような気がするのである。 人の心の中に旺盛な知的好奇心を醸成し、 それをそれぞれの人が自己努力により一つ一つ満たしていく手立てを提供したいと 常々考えておられたのである。その一つがドイツ語講座であったのだ。 知的好奇心に満足感を与えることが、どんなに人を幸せにするかを、 よく知っておられた方なのである。 その精神が具体的な形となって現れているのが「湘南アカデミア」の活動であり、 眼に見える形として結晶化したのが御著書の「湘南賛歌」 (初版2006年9月17日:江ノ電沿線新聞社発行)であるように思えてならない。 些事に拘泥しない淡々とした表情の奥に隠された吉田さんの底の深いロマンを心に留めながら 今後の湘南日独協会の活動に生かしていきたいものである。


吉田顧問を偲ぶ会開催

11月29日午後、故人の長女である江ノ電沿線新聞社松川社長をお迎えし、 湘南アカデミアで開催されました。織田正雄名誉会長、三谷喜朗、大石則忠、西山忠壬各顧問、 松野会長他の現役員、一般会員など約30名が出席故人を偲びました。 療養中の西澤英男監事は手紙を寄せられ、松野会長が代読されました。

湘南のロマン溢れる文化人として、湘南日独協会設立のみならず、 歴史、文学や音楽に係る各種団体の設立運営に多大な功績を残された個人を偲び、 故人を恩人と慕う、会員の高橋愉紀さん(ピアノスト)が、 バッハ作曲のゴールドベルク協奏曲から「アリア」と「第9番変奏曲」を会場備え付けの 電子ピアノで演奏、故人に捧げました。(大久保)


 募集
 湘南日独協会 会員募集中

  湘南日独協会では、会員を募集しています
   入会申込書(PDF版)を、 こちらからダウンロード、印刷、ご記入の上、協会まで送付下さい
  もしくは
   入会申込書(Excel版)を、 こちらからダウンロードし、
   エクセルで開き「編集を有効にする」「コンテンツの有効化」にして、必要事項をご記入頂き、
   保存の上、 こちらから、協会宛のメールに添付し、送付下さい

 ドイツ語オンライン講座の開講中

   湘南日独協会では、ドイツ語講座をオンラインで開講しています
   現在、受講者は募集していません
   詳しくは、 こちらをご覧下さい

 合唱団アムゼルの団員募集   歌う楽しみをご一緒に

合唱団アムゼルは創立17年、ドイツの歌・日本の歌を主にドイツ語で歌っています。 来年、春には18周年記念コンサートを、秋にはドイツの合唱祭参加も検討しています。 毎年藤沢の合唱祭、湘南オクトーバーフェスト出演しています。 良く知られた「野ばら」「ローレライ」から「美しく青きドナウ」「婚礼の合唱」「ビヤ樽ポルカ」等、 日本の歌では「浜辺の歌」「荒城の月」など、 クラッシックから映画音楽まで幅広く歌っています。 指揮指導は、ドイツのオペラハウスで活躍されておられた梶井智子先生、 ピアノ伴奏は内海祥子先生、ドイツ語の指導は団員のドイツ出身の志賀リンデさんです。

アムゼルのページは、 こちらをご覧下さい
これまでの演奏会、現在の練習の様子等を音源付きで見ること聴くことが出来ます。


練習は
 毎月第1と第3水曜日(第5も可能性あり)
 午後1時30分より3時30分
会場は
 カトリック藤沢教会(藤沢駅より徒歩8分)
問合せ
 理事 水谷妙子(045-895-6845)

理事 大久保 明


 SAS:おしゃべりの部屋    当分の間、休止しています

 談話室SASとは?
  Schwätzerei(おしゃべり) Am(で) Stammtisch(常連客の席)、ドイツで広く知れ渡っている文化
  親睦を深める会。自由なトークと情報交換の場

  詳しくは、こちらをご覧下さい

 「ドイツ文学読書会」へのお誘い   Hermann Hesseを原文で

ドイツ文学を原語で楽しむ会「ドイツ文学読書会」は、昨年10月に、発足しました。 始めるにあたり、発案者の松野義明・湘南日独協会会長が 目標とした点が三つありました。

一つは、参加者の誰もが気兼ねなく話せる雰囲気であること。
二つめは、ひと言も発しない人がいない会であること。
三つめは、誰でも、いつからでも参加できるように、その時点までの日本語訳と要点の解説を常に準備しておくこと。

この三つを掲げ、果たして何人が集まるのか、どのように進めていけばよいのか、 すべてが手探りの状態での船出でしたが、その心配は開始早々、 嬉しい誤算であったと思い知ることになります。参加者それぞれが、 個性的かつ意欲的で、毎回刺激的な会話が飛び交う活発な会となったのです。

この会の素晴らしいところは、ドイツ文学読書会である以上、勿論、ドイツ語で書かれた文学を、 原語で読み進めるのですが、ドイツ語にさほど習熟していない参加者も、 十分、楽しく参加できるということです。一例をあげれば、 現在の課題図書であるヘルマン・ヘッセ『デミアン』で、 主人公の少年がリンゴを盗んだというほら話をでっちあげる場面で、 「リンゴは、罪の象徴として使われている」と旧約聖書に結びつけての発言者は、 輪読には不参加の、いわば聴講スタイルの方からでした。 こうした意見によって、作品の深い味わいに気付かされるのも、 ひとりでの読書とは違う読書会の楽しみであると感じる瞬間です。

現在の在籍者は17名。湘南日独協会を、 この読書会で初めて知ったという方も多くおられます。 人生経験も多様で、小説の細部への理解も各人各様。 しかも、発案者の当初の目標どおり、誰もが気兼ねなく発言するのです。 侃々諤々、毎回の楽しい雰囲気を、おわかりいただけるでしょうか。

本は、一人で読むもの。しかし大勢で読んでそれについて話すのはそれに倍する喜びがある。 そう実感するのが「ドイツ文学読書会」です。ご興味をお持ち の方はいつからでもご参加いたけます。


理事 中村 茂子

 開催イベント
 詳しくは、こちらをご覧下さい
  湘南日独協会 催事カレンダー(2020年12月1日版)は、 こちら から、ご覧頂けます

  1月例会 
   1月31日(日)15:15-17:15 講演会 壁崩壊後のドイツ30年
  2月例会 
   2月28日(日)14:30-16:30 講演会 律令制と女性官僚
  3月例会 
   3月28日(日)14:30-16:30 講演会 私の短歌生活

 読書会:ドイツ文学を原語で楽しむ会
   

   詳しくは、 こちらをご覧下さい

 会員の皆様へ
投稿のお願い
会員の皆さんの日頃のご活躍を会報でお知らせしたいと思います。 演奏会・展覧会・発表会・講演会等の予定をお知らせ下さい。
会報は季刊、3月、6月、9月、12月の第2日曜日発行予定です。 前月の中旬までにメール・郵便のいずれでも結構です。お待ちしています。

皆様へ、ご協力お手伝いのお願い
季刊の会報Der Windの発送作業を、原則、季刊3月、6月、9月、12月の第2日曜日、午前10時から行っています。
お手伝い頂ける方は、ご連絡頂ければと思っています。

年会費について
これまでに、会費を振り込み頂いた方でお名前の記載がない方が居られます。会の方へご連絡いただきたくお願いします。



 これまでの掲載記事
   (寄稿など)


  会員掲示板(これまでのホームページ掲載記録 - ältere Nummern)
  劇場便り
  音楽の楽しみ方
  マインツから
  Deutsche Witze
  私とドイツ
  皆様から寄せられた岩崎先生への追悼文



 これまでの活動


  

 2008年 2009年
 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
 2015年 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度
 2020年度



 関連協会



 日独協会(JDG)

 〒160-0016 東京都新宿区信濃町18番地マヤ信濃町2番館
 受付時間:月〜金 10:00〜18:00
 TEL: 03-5368-2326 FAX: 03-5368-2065


 横浜日独協会(JDGY)

 〒223-0058 横浜市港北区新吉田東2-2-1-913
(事務局:能登)045-633-8717



 提携協会



 ワイマール独日協会

  Rainer-Maria-Rilke-Straße 10A, 99425 Weimar
   c/o : Peter Käckell
   E-mail : djg-weimar@t-online.de

湘南日独協会 開催行事の予定

  湘南日独協会 催事カレンダー(2020年12月1日版)は、 こちら から、ご覧頂けます

月例会

会場 湘南アカデミア 江ノ電第2ビル 7階
   藤沢市鵠沼石上 1-1-1 江ノ電第2ビル 7階
   TEL 0466-26-3028

会場 藤沢商工会館(ミナパーク)
   〒251-0052 神奈川県藤沢市藤沢 607-1
   0466-27-8888 (代表)


1月例会 壁崩壊後のドイツ30年  

日時 2021年 1月 31日(日) 15:15〜17:15
会場 藤沢商工会館(ミナパーク) 5階 502会議室
講師 Dr.クラウス・フィーツエ ドイツ大使館首席公使
概要 ドイツを分断してきた壁が崩壊して30年を経過、統一を果たしたドイツは、今やEUを
   牽引する大国です。しかし、EU内では、英国BREXIT、難民問題に端を発した旧東欧諸
   国との軋轢等に直面しています。また、強権の中ロにどう対応するのでしょうか。
   新大統領を迎えた米国との関係は?国内では、異文化の流入、核廃棄物処理、少子高
   齢化、企業統治等々、日本と共通する悩みも少なくありません。ドイツは問題にどう
   取り組んで行くのでしょうか。

   公使は、こうした問い掛けに出来る限り、答えて下さることでしょう。
   なお、お話は日本語で行われます。

会費 1,000円

懇親会 会場 未定

2月例会 律令制と女性官僚  

日時 2021年 2月 28日(日) 14:30〜16:00
会場 湘南アカデミア 江ノ電第2ビル 7階
講師 大澤 由美子 氏 湘南日独協会会員 湘南史談会幹事
概要 古代の日本は、中国大陸から遣隋使や遣唐使の派遣によって、進んだ文化を取り
   入れてきたことは、皆さんもご存知のことと思います。その中でも律令制を取り入
   れることで国家の基本を整えてきました。この時代は8代6人の女性天皇が国を治め
   てきました。では、女性官僚はどのように働いていたのか、探ってみたいと思います。

会費 1,000円

懇親会 会場 未定

3月例会 私の短歌生活  

日時 2021年 3月 28日(日) 14:30〜16:00
会場 湘南アカデミア 江ノ電第2ビル 7階
講師 大久保 明 氏  湘南日独協会会員 短歌結社「塔」所属
概要 「五七五七七」の短歌を作る、また短歌を読む楽しみ。美智子上皇后の御歌はじめ
   現代短歌作品を読みながら日本語を味わい、また日本語の将来を考えましょう。

会費 1,000円

懇親会 会場 未定


読書会

  ドイツ文学を原語で楽しむ会
   詳しくは、 こちらをご覧下さい

会費 1,000円
会場 ミナパーク 5階, 3階

    読書会の予定など、変更がある場合には、こちらでお知らせします
                           (2020/09/27 更新)
回数 月 日 会議室番号 時間帯
第16回 09/15 (火) 506会議室 15:00〜17:00
第17回 10/06 (火) 505会議室 15:00〜17:00
第18回 10/20 (火) 506会議室 15:00〜17:00
第19回 11/17 (火) 506会議室 15:00〜17:00
第20回 12/01 (火) 505会議室 15:00〜17:00
第21回 12/15 (火) 301会議室 15:00〜17:00
第22回 2021年  
01/19 (火)
505会議室 16:00〜18:00
第23回 02/02 (火) 505会議室 15:00〜17:00

談話室SAS

会費 1,000円

談話室SASについてのご紹介は、
こちらをご覧下さい


   当分の間、休会します

寄稿


10月例会
  ドイツ文学の名作の楽しみ方あれこれ

会員 田中 信子


剣岳山頂の筆者

7月に予定されていた講演会はコロナ禍のもと延期され10月25日(日)にようやく開催された。

講師、高橋忠夫様は群馬県前橋市在住、サンデン株式会社に35年勤務され、 ダラス、シドニー、ニューデリー、シンガポール、ジャカルタと海外勤務通算25年され、 柔道、マラソン、クラシック音楽鑑賞、将棋、読書、自転車、一人旅(オペラ、美術館巡りなど)と 多方面にわたるご趣味をお持ちの方です。

ドイツ語に出会われたのは55歳の時、シドニーでの「市民大学講座」。 画家で、翻訳家、語学堪能の先生やスイス人との出会いを通して、授業は勿論、 それ以外の時も濃密に接し、政治・経済・環境問題・芸術文化・教育・家族問題と多岐にわたって対話された。 Thomas Mannを愛した先生の影響で、老後の趣味としてMannの作品をドイツ語で読み始められた。

Thomas Mann(1875-1955‥明治8年-昭和30年)の代表作3冊の紹介

『Buddenbrooks』-- Lübeckの豪商の4代にわたる変遷と滅亡の大長編歴史物語。 1848年の欧州革命が生き生きと描写され、ワーグナーの愛と死、饒舌なトーニとクリスチャン、 寡黙なトーマスの妻ゲルダ等、卓越した鋭い人間観察力で作品に彩を添えている。 一人旅を楽しむ高橋様は舞台となったLübeckを3度訪れ、 いつもJugendherbergeに泊り、早朝の街、運河の美しさ、旧市街の散歩等を満喫された。

『Der Zauberberg』-- イロニー、ユーモア、無知からくる言い間違い、グリム童話などが満載されている。 この作品も時の流れ、死がテーマとなっている。

『Der Tod in Venedig』-- 少年の美と死がテーマ。難解な文体。 ゴンドラを棺桶として表現、ベニスがコレラもあり死にゆく街として描かれている。

Mannの規則正しい生活をする人となり、文豪の子供達の苦悩、三島由紀夫の華麗な文体との共通点なども話された。

Stefan Zweig(1881-1942‥明治14年-昭和17年)の作品紹介

『人類の星の時間』-- 世界の歴史的事件の裏側に隠された運命に翻弄される人々のエピソード短編集。 司馬遼太郎の作風に似ていて大変面白いの一言に尽きる。

『Balzac』--第一次大戦後のBalzacについて書かれたもので、人物が立体的に描写されて、 大作であるがとにかく面白い。

『昨日の世界』-- 遺作。 19世紀から20世紀前半のウィーンを中心に、政治・経済・社会・芸術・音楽・文学・美術・ 崩壊していくハプスブルク帝国とヒトラーを臨場感豊かに描いている。 世界が目まぐるしく悪化していくのが耐えられなかったのであろう、本の最後に遺書を書いている。

高橋様は難解な文体のThomas MannやStefan Zweigの原書を読む時は、日本語のものを読んだり、映画DVDを見たり、 CDを聞いたりし、あらゆる手段を講じて、あくなき探求心のもとドイツ文学に情熱をかけて読んでいらっしゃる。

又、前橋のご自宅からご両親が住んでいらした渋川の家まで毎日、利根川自転車道を往復30キロ、 IC Recorderでドイツ語朗読本を聞きながら自転車で通われ、読書三昧の日々を過ごされている。 身体的訓練とder Wissensdrangを併せ持たれ、理想的な老後の生き方を実践されていらっしゃる。

私は70歳を過ぎてからドイツ語と山登りを始めたが、高橋様のドイツ文学に挑戦する姿勢に大変感銘を受けました。


講演するの高橋氏


9月例会
  「ハイデッガーにみる『自然と人間』そして俳句」
         の講演に出席して

会員 藤野 満

去る9月27日にコロナ禍で休止していた例会に久々に出席、会員の下條氏の熱の入った講演を拝聴させていただき、 ハイデッガーに改めて触れ、「存在」について考えさせられました。

今年の11月25日は三島由紀夫(私の親族が学習院で級友、 妹が仮面の告白のモデル)が防衛省の陸軍市ヶ谷駐屯地に立てこもり、 割腹自殺をしてちょうど50年となります。彼は孤独感から自身の存在が分からなくなり、身体を鍛え、 人生の解を求めようとしたものの得られず、盾の会のメンバー一人と共に総監室で自決をしました。 自身の“存在(Sein)”を見つけるのが哲学かもしれませんが、 下條氏が今回ハイデッガーの著書「存在と時間(Sein und Zeit)」に着目したのはハイデッガーは 「ことば」も一つの存在の宿であると考えていることです。

下條氏は15年余二つの俳句の句会の指導をされ、俳句にこそ、 短いことばのなかに深い存在があることを発見しました。 ことばは本来人と人との間で意思を伝える手段であり、ことばは行動を支えます。 そのことばを道具でなく存在として捉えることは、ことばを意思そのものの表れとして認識するものです。

三島文学は壮麗な文体で読者を魅了しました。彼は作家としてことばの力を早くから認め、彼なりの存在を示しましたが、 彼自身の存在については最後まで空虚なままでした。

下條氏は俳句のなかには意思のみならず、事実そのものまで存在するとみました。 ドイツは音楽と哲学の文化で成り立っているといわれます。 下條氏はドイツのみならず、俳句のような日本古来の文化にも哲学は存在すると。 江戸末期に活躍した松尾芭蕉は自然を詠った俳人をして有名ですが、 「私意を捨て、自然と一体になる自分を見出すことで、物の機微に隠れているまことが自ずと立ち顕れる」と述べています。

また芭蕉は奥の細道で「月日は百代の過客にして往きかふ年もまた旅人なり」と、 変わる時間を流行、変わらないものをまこととして不易流行、無常観を伝えているとか。

芭蕉のみならず、小林一茶、高浜虚子、与謝蕪村、そして正岡子規も写生句の中に無常を表す句を発表しています。 歴史や史学に関係した俳句、境涯や社会探求を詠んだ俳句、そして死を覚悟した俳句など、いくつも例をあげておられました。

また最後にミュンヘン独日協会の元会長故ギュンター・クリング氏が読んだドイツ語の句もご紹介されました。

締め括りに平成上皇が退位されたときのことばを挙げ、 全身全霊で務めてこられた全身とは身体の存在であり、 全霊とは理性の働きである本質存在として現存在の開蔵が象徴天皇の姿であると。

自分の感想として、日本では哲学は衰退の傾向にあり、嘆かわしいと伝わざるを得ません。 ドイツでは哲学は文学の一部ではなく、独立した学問として学ばれ、 昔のドイツの大学では哲学部の下に科学や医学などが入っていたほど。 今でも科学理論と宗教と哲学が同じ学部に入っているミュンヘン大学などの例があります。

また存在としてのことばは簡単に存在を示すことができるため、真実のみならず、 虚偽のことばも存在します。政治思想家のマキアベリは君主論において、 君主は立場を守るため嘘も認められるような記述があります。 嘘八百という言葉がありますが、アメリカのトランプ大統領は 在職中8千回も嘘をついたと書いた米国の有力紙がありました。 ことばも存在としての位置付けがあるということが認識されれば、 政治家も慎重な発言をしてこそ、真の政治家として認められると自覚をするのではと思わざるを得ません。


筆者 藤野 満氏


講師の下條 泰生氏


ドイツの高齢者事情その2
(統計データより)

田中 満穂

前回、9月13日の寄稿ではStatistisches Bundesamt Wiesbaden2011年6月に発行された統計データより内容をご紹介しましたが、 2016年6月に発行された新しい統計資料が見つかったので、 今回はその内容から面白そうなテーマの統計資料をいくつかご紹介します。 ドイツ語を理解される読者も多いと思いますので、今回、元のグラフは敢えてそのまま表示しています。

一部前回とテーマがダブるかもしれませんがより新しい資料ということで敢えてご紹介します。
まず、ドイツの年齢グループ別人口構成です。

(2014年)


(出典:統計Dashboard)

日本の年齢別人口構成(2015年)と比べて近いとも言えますが、日本の場合、60代が非常に多い(ベビーブーマー世代)のが特徴といえます。

次に、ドイツ高齢者の生活資金源はどうなっているのかが次のデータです。 データは65歳以上の2014年時点での主たる収入源をパーセンテージで示したものです。ドイツでは2012年以来、 年金支給開始年齢が67歳となるまで徐々に高められており、2014年の統計集計当時はその途中となっていました。

61%でもっとも多いのが年金又は財産、次に35%で自分の仕事から、3%が親族からの収入、1%以下が失業保険・社会保障など。

その額が上のデータです。やはり2014年当時、65歳以上の男性・女性別の収入額別パーセンテージを示しています。

上のグラフがペアで暮らしている男性・女性、下のグラフが一人暮らしの男性・女性です。 男性・女性ともに金額グループは色の薄い順から;900€以下、900〜1300€、1300〜2000€、2000€以上のグループです。 男性の場合は比較的均等に分散していますが、一人暮らしの女性の場合、2000€以上は男性と比べ少数になっています。

次に2014年時点での65歳以上の高齢者入院患者の罹患状況を人数で示したものです。 単位は1000人。男性の場合、多い順から1)循環器系の疾患、2)ガン、3)消化器系疾患、 4)怪我、中毒など外部的要因による疾患、5)筋肉、骨、関節系の疾患。 女性の場合、多い順から1)循環器系、2)怪我、中毒など外部的要因による疾患、 3)筋肉、骨、関節系の疾患、4)ガン。女性の場合、ガン患者の順位が一番下になることが興味深いですね。

介護の状況はどうなっているでしょうか?(上のグラフ)2013年のデータです。 トータル母数260万人のうち、1)47%が家族による家庭内介護、2) 29%施設内での介護 、3) 24%が外部の介護サービスを家庭内で受ける、となっています。

上のグラフは65歳以上、 5歳ごと年齢がアップしていく枠組みでパートナーの存在がどう変わっていくかのグラフです。 データは2014年時。単位はパーセントです。青が男性、赤が女性。 薄色から濃い色になる4カテゴリーで、1)パートナーを先に亡くした、 2)離婚、3)二人暮らし、4)独身となっています。 女性の方が長生きしますので、女性の場合、パートナーがいるペアが加齢とともに圧倒的に低くなります。

今度は65歳以上の高齢者の生涯学習意欲です。 上のグラフは2004/05年から2014/15年までの65歳以上の高齢者の大学機関での聴講生の数の推移を示したものです。 (単位1000人)徐々にその数が増えています。

さて、最後のデータは65歳以上高齢者のインターネット利用率です。 2011年から2015年までの推移を表しています。 比較対象は16〜24歳までの若い世代との比較です。 2011年には35%だった高齢者のインターネット使用率が2015年には48.6%まで上昇しています。 高齢者の新しいことへの挑戦の表れと見ても良いのではないでしょうか。 因みにドイツの高齢者のネット使用率のEU域内順位は7位となっています。 ここでも欧州の南北問題は顕著なようです。(おわり)


「クラシック音楽の楽しみ方」  第8回

会員 高橋 善彦

今回は、管楽器の話です。オーケストラで使われる管楽器には、Flute, Oboe, Clarinetto, Fagottoのような木管楽器と、 Horn, Trumpet, Trombone, Tubaのような金管楽器があります。 元々、木で作られていた楽器を木管楽器(英:Woodwind, 独:Holzblasinstrument)と呼び、 金属で作られていた楽器を金管楽器(英:Brass, 独:Blechinstrumente)と呼んでいます。 とは言っても、現在、Fluteは金属製の楽器が多く、例えば、Alpen Hornの様に木製の金管楽器もあります。 新しい楽器、1840年代に作られたサックス(Saxophone)は木管楽器に分類しますが、木製の楽器は見かけません。

木管楽器と金管楽器の分類は、名前の由来以外、素材で分類するのではなく、 音程の作り方で分類します。 笛を見てみると、楽器に孔が開いていて、孔を指で開閉して管の長さを変えて音の高さを変えて音階を作ります。 この方式を使っている楽器を木管楽器と呼んでいます。

Recorder

Flute

Oboe

Clarinetto

Fagotto

金管楽器も管の長さを変えて音階を作ります。金管の中でTromboneはスライドで管の長さを変えています。 この方式は、古い時代から使われています。Trumpet, Horn, Tuba等の金管はバルブ機構を使って、息の流れる管を切り替えて管の長さを変えています。






Valveには色々な方式があります。代表的なValveは、
  フランスで開発された上下に動くPiston 型と、
  ドイツで開発された90度回転する Rotary 型です。
いずれの方式もValveに付いている短い管(迂回管)を通るか、通らないかを切り替えます。 この仕組みが作られたのは、Beethovenが第九交響曲を初演した1824年より少し前のドイツです。 ドイツのHorn奏者で研究家のHeinrich Stolzelが、金管楽器用のValve機構を考案し、 1818年に最初のvalveを開発し、その後各方式に発展します。

伝統のWiener Philharmonikerが使っているHornには、1830年頃に考案された独特のValve、 Wienerバルブ(Ventil)を使っています。 古い方式で、使い易いとは言えないのですが、音色の理由で今でも使っています。


Wienerバルブ(Ventil)

現在、標準的に使われている 3本Valve機構は、
  第1 Valveが全音、第2 Valveが半音、第3 Valveが全音半
分の管路長を長くし、音の高さを下げています。 この様なValveを組み合わせて使うことで半音階を演奏可能にしています。 音域を拡げるために3本以上のValveを装備している楽器も多くあります。

  
5 valve Tuba                4 valve piccolo trumpet


楽器分類から見ると、木管楽器と金管楽器の分類に使うもう一つの特徴があります。 木管楽器にはリード(英 :Reed, 独 :Zunge, Tonerzeuger)と呼ぶ、楽器の音の元となる仕組みがあります。 金管には有りません。金管では唇がリードの代わりになります。

Oboe, Fagotto, Bag-pipe, 日本の篳篥(ひちりき)などには、2枚の葦などで作るリードを合わせて、間に息を吹き込み振動させます。 このような楽器をダブルリード(Double reed)楽器と呼びます。Clarinetto, Saxphoneでは1枚のリードが振動し、 シングルリード(Single Reed)楽器と呼びます。 Recorder, Flute, 尺八、和笛にはリードは有りませんが、楽器に息を吹き込むと管が鳴るように作られ、エア・リード楽器と呼びます。


金管楽器には、楽器に息を入れ振動する唇を支える、マウスピース(英:Mouthpiece, 独:Mundstuck)を差し込むだけです。

この様に管楽器を分類する方法を2通り用意していると困ることがあります。
長い音楽史の中では、例外的に両方の特性を持った楽器が現れます。 そこで、楽器分類上では、後からご紹介した、発音原理によって木管と金管を区分しています。

この例外的な楽器は、Trumpet系統に出てきます。これには理由があります。 1840年代までValve機構を持たず、半音階を演奏出来なかったTrumpetに、何とか半音階の演奏を出来るようにしようと試行錯誤を繰り返し、 その過程でいろんな方式の楽器が生まれます。

Trumpetを元にしていますので、楽器の吹き口にリードは無くマウスピースだけです。 木管楽器の様に、楽器本体の管に孔を開けて、半音階を演奏出来るようしています。

イタリア・ルネサンス音楽の後期、Venezia派のGiovanni Gabrieli(c.1554 - 1612)やClaudio Monteverdi(1567 - 1643)の時代の教会では、 Cornettoと呼ぶ楽器が使われています。 現代の金管楽器、Trumpetの親戚の楽器と同じ名前で紛らわしいのですが、 下の図のように全く異なる楽器です。 ドイツ語ではZinkと呼びます。 ルネサンス時代の教会で、合唱の後ろに立ち合唱の高声部を演奏することが多かった楽器です。 もちろん、今でも古楽の演奏ではよく使われている楽器です。

楽器の素材は木で、本体に孔が開いています。見た目は木管ですが、吹き口の方式から金管に分類します。専門の奏者以外では、Trumpet奏者が兼任で演奏します。

1796年にJoseph Haydnが作曲した、Trumpet 協奏曲 変ホ長調(Es-Dur)はよく知られている曲ですが、 この曲の独奏には半音階が必要です。この曲は、キー付きTrumpetという、見慣れない楽器の為に作曲されています。 Haydnに続き、J. N. Hummelもこの楽器用に協奏曲を作曲しています。


英:Keyed trumpet, 独:Klappentrompete


 この楽器は上のCornetto (Zink)と同じ原理で本体に孔を開けています。
 こちらは金属製です。後のValve付きtrumpetの登場で使われなくなります。


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私の愛器たち
オーケストラのトランペット奏者は平均何本のTrumpetを持っているのでしょう?


劇場便り その23

これまでの劇場だよりは、こちら からご覧頂けます

ブレーマーハーフェン 志賀 トニオ 氏


お隣のチワワと一緒に
アドヴェント・カレンダーを抱えたお子様たち

12月はドイツ人にとって特別な月。思えば私も子供の頃、 毎年12月になるのを待ちわびていました。 12月1日から24日までは毎日朝起きては一目散にアドヴェントカレンダーの所に行って、 カレンダーの窓を開けるのが日課となります。 第一アドヴェントからクリスマスまでは毎日曜日に天井に吊るした アドヴェントクランツ(円形にしたモミの木に4本のロウソクが立っているもの)のロウソクに火を灯し、 家族で歌を歌います。第一アドヴェントでは4本あるうちの1本だけに火を灯し、 毎週1本づつ増やしていきます。

毎週明かりが増していく喜びを今でもよく覚えています。 12月6日の朝には夜中にWeihnachtsmann(サンタクロース)が 靴の中に入れてくれたお菓子入りの靴下を一目散に取りに行きます。 そして毎晩のようにクッキーとStollen(シュトーレン)作りのお手伝い。

特にクッキー作りでは、出来た生地を伸ばしてクッキー型で型取りしていくのが兄と私の仕事。 ざっと50種類はあろうクッキー型からお気に入りの物を選んで作業していると、 母からもっと色々な種類を使うようにと促されたものです。 そしていよいよクリスマスイヴの日、朝から居間の襖が閉じられ入室禁止に。 そこにはChristkind(幼児キリスト)が来てモミの木と贈り物を持って来てくれるのです。 夜には教会に出かけクリスマス礼拝に参加し、帰宅するとようやくその襖が開けられ、 中には装飾された美しいモミの木とその下に贈り物が! 私と兄はもちろんその贈り物の中身を早く見たい一心なのですが、 まずはモミの木のロウソクに火を灯し、讃美歌を歌わなければなりません。 義務を果たし、ようやく贈り物を開封した後には、ひと月かけて作ってきたクッキーとStollenにありつけます。 そして25日から30日までは毎日パーティー三昧。31日から突然正月モードに切り替わり1月3日まで新年のお祝いが続くのです。

これは日本で過ごした私の家族の一例ですが、ドイツではこれにさらにクリスマスマーケットでの楽しみもあり、 そしていよいよ本題、なにより12月はドイツ人が伝統的に劇場に足を運ぶ季節なのです。 今ドイツはコロナ禍のロックダウン中です。 11月をロックダウンしたのは12月を少しでも通常に近い状態で過ごしたいとの政府の思惑があったと思います。 しかし感染者数は減少せず、11月16日に行われた政府の会議後には 12月からのロックダウンの延長が発表されると皆覚悟をしていましたが、 決定は1週間先延ばしにされました。 感染者数の減少を待ち、なんとかして12月から規制を緩和できないか模索する政府の執念を感じました。 劇場も11月2日から公演がキャンセルされましたが、春先と違うのは今回は稽古は出来る事。

毎年恒例のWeihnachtsmarchen(クリスマスシーズンの子供向けの演劇公演)は 今年はRobin Hood(ロビン・フッド)。 昨日ゲネプロまでの稽古を終え、公演再開を待っています。 オーケストラの定期演奏会は演奏をインターネットで配信する事になりました。 オペラ部門は元々12月25日にドニゼッティ作曲のランメルモールのルチアのプレミエを予定していましたが、 こちらはコロナの影響でシーズン始めにすでにキャンセルされており、 11月から12月にかけてはその代わりに公演回数を増やし、 観客の定員が4分の1(大ホールでは186人)に抑えられている穴埋めを行う予定でいました。 実際、シーズン開始依頼ほぼ全ての公演が売り切れの状態であったので、少しでも減った収入を補いたい予定でした。 私もミュージカルの”シカゴ”の公演を指揮する予定がありましたが、その多くがキャンセルとなってしまいました。 しかし、幸運にも私が指揮する1回目のシカゴの公演が11月1日のロックダウン1日前であった為、 せめてその貴重な機会を入魂のタクトで締めくくる事ができました。 本番後には自然と今日は絶対に打ち上げをしようという事になり、 歌手達と近くの居酒屋に繰り出そうとしましたが、こちらもこの日が最終日。 夜の10時前でしたが、かろうじて一軒だけ開いていて、食事なしの飲みだけならという事でしたが、 ロックダウン前の最後の祝杯を挙げる事ができました。 そしてその1日前の10月31日にはこちらも滑り込みセーフでカルメンのプレミエが行われました。

このカルメンもシカゴと同じく90分の休憩無しバージョンに改編せねばならず、 今回はMarius Constant(マリウス・コンスタント)編曲”La Tragedie de Carmen”(カルメンの悲劇) という作品が採用されました。コーラスや脇役がカットされ、 オーケストラも小編成ですが、 主要な登場人物の心の葛藤に内容が凝縮される長所もあったように感じました。 3月にはプレヴィン作曲の”欲望という名の電車”をゲネプロまで稽古しながら、 プレミエ前日にロックダウンとなり公演を断念していましたので、 今回はコロナがなければ滅多に採用されないアレンジ作品をせめてプレミエだけでもお見せ出来た事に皆安堵しました。 そして近い将来公演が再開する事を祈っています。


シカゴの一場面


カルメンの一場面


日独友好功労の表彰を受けた故吉田克彦顧問

大久保 明





2011年には日独修好150周年の記念行事があり、吉田克彦さんはシュテンツェル大使より表彰を受けました。 同じ時に合唱団アムゼルは合唱を披露いたしました。


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