ドイツの老人ホーム及び年金事情
田中 満穂
博学の読者の皆様方に今回ドイツの何をお伝えしたら良いのか、
何をお伝えできるのかは甚だ不安ではありますが、日頃、
ネットサーフィングをしながら楽しんでいるドイツ、あるいは欧州の事情を今回お伝えしたいと思います。
今日は、皆様がひごろ気になっているかもしれないテーマ、ドイツの老人ホーム事情です。
まずはドイツのウィキペディアから老人ホーム(ドイツ語の一般的、上部概念として”Altenheim“と言うようです)の説明をご紹介します。
以下、ウィキペディアからの引用:
老人ホームはドイツでは、AltenheimまたはAltersheim、Feierabendheim、Feierabendhaus、Seniorenheim、
Seniorenresidenzなどと呼ばれている。一般的には、老人が付き添い、
介護などを受け取ることができる住まいと理解され、Altenheimという単語は最近では「介護ホーム、Pflegeheim」
と同義の単語として使われるようになっている。
より専門的には、Altenheimは次の3つのカテゴリーの中間に位置する定着式(移動することのない)老人介護施設となる:
1)Altenwohnheim 住むことに重点が置かれた設備。
その他の機能は限られた範囲での提供となっている。
2)Altenheim この施設では、狭い範囲での介護の必要性が存在し、
自分自身で決めることができる生活が主体となっている。
部屋の掃除や片付けのサービス、食事の提供は常に要求されている。住人が家事を行うことはない。
3)Altenpflegeheim 全面的に、特に介護を必要とする人の常備的介護が24時間この施設では
存在している。
別の名称で日常的に使われる“Altersheim“(sが付いている)は、専門用語としては通常使用が回避されている。
理由は、老人“die Alten“(Alters-は単に「年齢の」という意味)のために運営されているホームだからである。
今日的にはAltenheimは、介護が提供されるホームと受け止められているが、
専門家の間の理解では、それだけに止まらず、最近のホームでは、住民の日常の正常化と生活への参加に重点が置かれるようになっている。
ドイツでは上記3種類のホームのうちAltenpflegeheimが最も普及している。
その数は2003∼2005年の間に7%増え10,424箇所に、2015年には全体で13,596箇所に増えている。
この施設に関する適用法はSGB XI(介護保証法)とSGB XII(社会福祉法)となっている。
因みに、日本の老人介護施設はどのくらいあるかというと、
有料老人ホーム(介護付き有料老人ホーム+住宅型有料老人ホーム+健康型有料老人ホームを合わせた)
が13,525箇所、認知症の方を対象とするグループホーム12,124箇所、
特別養護老人ホーム7,891箇所となっています。
(2019年6月25日時点、出典「平成29年社会福祉施設等調査の概況」、「平成27年度介護報酬改定に向けて」、
「サービス付き高齢者向け住宅の登録状況」)
老人ホームの種類別施設数
プラウアムゼーのヴィルデハウス(Wilde-Haus in Plau am See)
ドイツにおける経営母体別に見ると、その分布は以下の通り。
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国営:
非営利組織:
財団組織:
小規模民間組織:
大規模民間組織:
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約10%
約30∼60%
約1∼5%
約15%
15%以下
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ではドイツの老人人口比率は他のヨーロッパ諸国と比べどうなっているかというと、
ちょっとデータは古いですが(2010年)以下の統計データがあります。
(以下、ドイツ連邦統計局2011年のデータより)65歳以上のドイツの人口構成比はなんと、
欧州諸国でもトップです。(1位ドイツ20.7%、2位イタリア20.2%、3位ギリシャ18.9%)
ドイツ国内の65歳以上の人たちで、一人で生活している割合、
ペアで生活している割合、それ以外の割合は下記の通り。一人で生活している人々が34%、
ペアで一緒に暮らしている人々が57%、それ以外の形態で暮らしている人達が9%。(下の赤グラフ)
一人暮らし ペアで暮らす その他の暮らし
次に、気になる年金の支払額です。
やはりデータはちょっと古い2009年データですが、これには、新しくドイツに加わった旧東ドイツの
男性・女性の方が旧西ドイツ市民より多く受給しているという事実があるようです。
旧東ドイツ市民男性で月額平均1,069€、同じく旧東ドイツ市民女性で702€、それに対し旧西ドイツ男性、
女性がそれぞれ702€、487€となっています。この差は、
旧東ドイツでの女性の就業率が当時の西ドイツ女性に比べ遥かに高かったことが指摘されています。
参考に日本における年金受給額のデータをアタッチしておきます。
最後のグラフ(下)は各国の購買力の違いを考慮に入れたドイツの老人の収入を100とした場合の欧州各国の65歳以上の比較です。
(2008年度比較、ただし、計算ベースは不明)
こうして見ると、ドイツにおける65歳以上の高齢者の状況が少し垣間見えますね。以外にもフランスがドイツよりも上に来ているのは興味深い点です。
(1位ルクセンブルク168、2位オーストリア107、3位フランス107、4位オランダ106、5位ドイツ100、6位スウェーデン98)
次回は、出来たらもう少し広範にドイツ及び欧州の高齢者の生活の実情をこのレポートから見ていきたいと思います。
(上記内容はStatistisches Bundesamtm Wiesbadenより、2011年6月に発表された資料“Aletere Menschen in Deutschland und der EU“から抜粋しています)
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